タイル張り外壁のマンションの調査診断実施例(2015.09)

(画像、建物概要など特定できないように実建物と若干変更しています。)



1.建物の概要(東京都、マンション)

2000年頃竣工、鉄筋コンクリート造、地上9階建て、敷地面積 400㎡、建築面積 170㎡、延床面積 1300㎡

2.打音検査による調査結果

タイルの浮きの分布傾向

東面、南面、北面の外壁について全面打診調査を実施

・東面は浮きが、5階以上の階に集中しており、浮き率が4割を超えている。

・北面も浮きが、5階以上の階に集中している傾向があるが、東面よりも浮き率は低い。

・南面は、7階以上の手摺壁に集中している傾向がある。

 【打診調査結果表2(階層毎の浮きの分布状況)】

階数
東面南面北面
浮き率浮き率浮き率
945%21%16%
841%14%9%
741%21%24%
647%9%15%
548%3%6%
45%4%1%
313%6%1%
23%5%1%
10%6%1%
合計


上層階の浮き率が大きいことがわかる調査結果図











浮き状況が階層で大きく違う原因

浮き状況にばらつきがあったことから、タイル張付断面の状況を確認するために、東面で階層毎のタイルサンプリング(引張接着強度試験)を行い確認した。

・確認した結果では、1~5階にはタイル下地に付け送りモルタル(20~40mm)程度が施工されており、6階以上はコンクリート打放のうえに直張りとなっていることが分かった。




   





軽量モルタル施工部


3.調査結果のまとめ

調査の結果、タイル下地により浮きの傾向の違いが大きいことがが分かった。

タイル下地部位まとめ
コンクリート打ち放し東面・北面:5~9階
南面手摺壁、南面1階
浮きの比率が多い(特に東面)
南面手摺は7階以上が多い
軽量モルタル東面・北面:1~4階浮きの比率は比較的少ない
(東面3階は多い)

①コンクリート打放し下地

コンクリート打ち放し部に、タイルの浮きが集中した要因は複合的な要素が多い(別にレポートをまとめる予定です)、特定することは難しいが可能性のあるものを下記に記す。

・コンクリートと張付けモルタルの収縮率の差(緩衝層としての下地モルタルが無い)

・コンクリート表面の脆弱層や離型材等付着に有害な成分の存置

・躯体の目荒し不足

・下地処理に起因する要因(吸水調整材の不適切な施工(過度な塗布など)または、吸水調整不足)

・躯体補修モルタル(薄塗)と貼り付けモルタル材の不適合、薄塗モルタルのドライアウト

・その他施工時の要因(気候、材料のオープンタイムなど)


軽量モルタル部

この調査の結果では、浮きの比率は比較的少なかったものの、軽量モルタルが使用されている場合(内装用が使用されている事例がある)は、躯体と軽量モルタルの界面での剥離が顕著なケースもあり注意を要する。

コンクリート躯体と軽量モルタルとの界面で大きく剥離している事例(別物件)








変更履歴


  1. 2021/01/10:作成